八段錦(Ba Duan Jin)には「八つの部分で構成される非常に優れたもの(錦)」という意味があります。その発祥は宋の時代に遡ると言われますから、相当の歴史がある古代健康気功法と言えます。
「八」はとても重要な数字です。
中国で「八」は、「発」とかけて「拡大する」という意味を持ちます。
西洋でも8を横に向けると「無限」を意味する記号となります。
東西南北の「八方位」でもわかるように、「八」は宇宙への無限の広がりをも意味しているのでしょう!
八段錦は、動作そのものは非常に単純ですが、逆にこれらの動作の中に体を健康に保つ動きが完成度の高い形で組み込まれていると言えます。練功時間として10分もかかりません。
たとえば毎日三回もやれば体の血流・循環(気血の流れ)がすぐ良くなりますので、忙しい毎日の生活の中に積極的に取り入れ、ぜひ健康管理にお役立て下さい。
各式ともに8回づつ行うのが理想的です!
第一式(双手托天理三焦)スウァン シュー ツォ ティエン リ サンジョー
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第一式(双手托天理三焦)は、胃腸を丈夫にします。
ぜい肉をとり、肩こりにも効きます
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足は肩幅に開き自然に立ちます。両手をお腹の前で手のひらを上にして組みます。
組んだ手はお腹からこぶし一つくらい離します。まず息を全部吐き切ります。
息を吸いながらゆっくりと手を上に持ち上げていき、肩の高さまで来たら、
手のひらを下に向け、息を吐きながらゆっくりと下を下ろしていきます。
下ろしたら手の力を緩め、持ち上げていきます。肩の高さに来たら手のひらを上に向けて手のひらで天を支えます。
息を吐きながら組んだ手をほどき、ゆっくりと両手を円を描いて下ろします。
手を下ろす時は、ボールを水に沈める感じで、上げる時はボールが浮いてくる感じで
重心は下半身において、腰と据えて立ちます。
第二式(左右開弓似射雕)ズォ ヨュ カイ ゴン ス スェ デォ
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第二式(左右開弓似射雕)は、胸の筋肉を柔らかくし、肺や心臓の強化に役立ちます。
特に心臓病の予防、治療に大きな効果があります。
また、足腰を鍛えることになりますし、女性の場合はバストを豊かにします。
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足は肩幅の2倍に開きます。足先は少し開いた方が楽です。
まず息を吐ききります。
息を吸いながら腕を軽く伸ばして手の甲を上に上げて行きます。
息をはきながら両手を下ろし、同時に後ろへ腰掛けるように腰を少し落とします。
息を吸いながら、両手で拳を作りながら肩の高さまで持ち上げます。
息を吐きながら左手の人差し指と親指を大きく左に広げます。
拳の目(親指と人差し指で出来る円)が上を向くようにして下さい。
視線は左手の向こうを見ます。
同時に右手は弓を引くように大きく右に引きます。
弓を引いて放つ姿勢をイメージして下さい。
息を吸いながら、両手を目の前に戻し、息を吐きながら手を解きながら下ろします。
今度は同じ要領で、右手を行います。
必ず左右対称でやって下さい。終わったら足を肩幅に戻し自然に立ちます。
第三式(調理脾胃須単拳)ティオ リ ピ ウェ シィ デァンジジュィ
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第三式(調理脾胃須単拳)は、脾臓と胃を丈夫にする運動です。
胃炎や胃・十二指腸潰瘍の予防、治療にも効果があります。
身も心ものびのびさせ、精神的なイライラや不安を取り去り心身のバランスをよくします。
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自然に立ち、息を吐き切って整えます。
息を吸いながら手のひらを上にし両手を上げていきます。
肩の高さまで来たら、手のひらを下にして息を吐きながらゆっくりと下げていきます。
みぞおちまで下げたら、息を吸いながら左手は上に、右手はそのまましたへ下げます。
丁度天と地を分けるような感じで。左は天を支え、右は地と抑えます。
息を吐きながら、右手はそのまま、左手をゆっくり下ろします。
両手同時に下を向くようにおさめ、最初の姿勢に戻ります。
今度は同じように左右を逆にして行います。
第四式(五労七傷往后)ウ ロォ チィ スァン ウァン ホォ チョウ
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第四式(五労七傷往后)は、心・肝・脾・肺・腎の内臓の疲れと、慢性的な体調不良を改善するのに役立ちます。
また、冷え性や肩こり、便秘などの解消にも役立ちます。
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自然に立ち、息を吐き切って整えます。
息を吸いながら手のひらを上にして両手を上げていきます。
顔の前で手のひらを返して下に向け、息を吐きながら手を下ろします。
その時、首はゆっくりと左へ回し、意識は右足の裏(土踏まず)にもっていきます。
ゆっくりと息を吸いながら、手のひらを上に向け、顔の前まで戻し、首も正面に戻ります。
手のひらを下に向け、息を吐きながら手を下ろします。
今度は首は右に回し、意識は左足の裏に持っていきます。
左右セットで行い、最後は顔を正面に向けたまま両手を下げ自然に立ちます。
第五式(揺頭擺尾去心火)イォ テォ ベェイ ウェ チィー シィンフォ
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第五式(揺頭擺尾去心火)は、内臓を強くし、慢性病を治療します。
また、心の中にくすぶっているイライラを取り去ります。
精神的なイライラやストレス解消に効果があります。
美容的には、下半身を美しくし、足腰を強くするとともに、ヒップアップに効果があります。
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自然立ちから足を肩幅の二倍に開き、息を吐ききります。
息を吸いながら、両手を前方に持ち上げ、吐きながら後ろに腰掛けるように腰を落とします。
息を吸いながら両手は、親指が外を向くように太ももに置き、正面を向きます。
息を吐きながら、肩から右を向き、上体を前に倒します。
尾てい骨を中心に、背骨を一本にして右から前を通って左へゆっくり回します。
この時、両手は軽く置いておくだけで、体重を支えません。
体重を支えないようにするため、手は後ろで組んでも良いでしょう。
頭が左ひざの上に来たら、息を吸いながら首を回し右足の土踏まずを見ます。
息を吐きながら、首を元に戻します。
息を吸いながら、逆に上半身を左から前を通って右ひざの上にもっていきます。
正面に向き直って、最初の姿勢に戻ります。再び大きく息を吸って今度は左ひざから始めます。
必ず左右セットで行いますが、姿勢がきついので無理せずゆっくりとやってください。
第六式(両手攀足固腎腰)リャン シュー パン ズゥ グゥ スェンヤォ
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第六式(両手攀足固腎腰)は、腎臓と腰を強くします。
また、胃腸の働きをよくして、消化吸収を助け、便秘を防ぎます。
美容的には、美しい下半身をつくり、ヒップアップに効果があります。
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自然立ちで、息を吐き切って整えます。
身体の柔らかい方は両足を閉じて行っても良いでしょう。
息を吸いながら、手のひらを下にして肩まで上げます。
息を吸いながら、元に戻す勢いで手を頭上まで上げます。
息を吐きながらそのまま下ろします。少し後ろまで持っていきます。
両肘、わき腹、腰、手、体全体を伸ばします。この時呼吸は楽にします。
息を吐きながら手を太ももの裏側を沿わして、上体を前に倒していきます。
膝も伸ばして、ゆっくりと吐く息に合わせておこないます。
届く人は両手でかかとを掴んで体を引っ張ります。
届かない人は何処でもいいので足を後ろから掴んで引っ張ります。
力を抜いて、手を離し、息を吸いながら上体をゆっくりと起こし最初の姿勢に戻ります。
第七式(攅拳怒目増気力)ズァン チゥエン ヌ ム ズェン チィリ
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第七式(攅拳怒目増気力)は、全身の筋肉を動かし、気力を増進させます。
「突き」のような動きは、血圧を上げてしまいそうですが、雑念を払い、精神統一がはかれるので、血圧を下げる働きをします。
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自然に立ち、肩幅の2倍くらいに足を開きます。息を吐き切ります。
息を吸いながら、両手拳を握り腰の位置に置きます。
息を吐きながら腰を落としていき、左手を左前方へ、押し出します。
この時、手は拳のままです。
息を吸いなら左手を開いて外側に回転させて腰の位置まで戻します。
次は右手を同じ要領で行います。必ず左右対称にやって下さい。
ポイントは拳を強く握り、目を怒らせて気力を増大することです。
ただし、力み過ぎないように注意してください。
第八式(背后七顛百病消)ベェ ホォ チィ デェン ベェイ ビィン ショウ
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第八式(背后七顛百病消)は、多くの病に効果があります。
心身を柔らかくほぐし、血行、疲労回復に役立ち、便秘と痔を予防します。
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両足は揃えて自然に立ち、息を整えます。
息を吸いながら、手のひらを下向きのまま肩の前まで上げます。
吐きながら下ろします。
息を吸いながら、肛門をしめ下腹をへこまして、両足のかかとを少し上げます。
この間、息は吸い続けて下さい。
お臍の辺りのスヴァーディスタナ(丹田)に気を集めるように意識しましょう。
息を吐きながらストンとかかとから軽く落とし、膝も軽く曲げます。
このときのかかとに伝わる振動に注目してください。
このとき、かかとをつけたまま前後に体重を移して軽く揺してみても良いでしょう。
整理体操
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整理体操は、各式を終えるたびに行います。この整理体操によって活性化された内臓を休ませることができます。
時間が無いときなど、短時間で1〜8式までを通して行う場合は、8式を終えた最後にこの整理体操を行ってください。
この整理体操は、内臓への負担を減らすため、必ず行うようにしましょう!
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足は肩幅に開き自然に立ちます。
両手をお臍の下1.5寸(約4cm)の丹田の前で手のひらを上にして組みます。
組んだ手はお腹からこぶし一つくらい離します。
まず息を全部吐き切ります。
息を吸いながらゆっくりと手を開いて空中の陽の気を集め円を描きながら上に持ち上げていき、頭の高さまできたら、手のひらを下に向け、息を吐きながら頭上から集めた気を入れるような感じでゆっくりと下を下ろしていきます。この時、体内の毒素を洗い流すようにイメージします。
そして、最後は丹田に気を収めます。